今週クローズアップするハゼ(2004年6月9日アップ)

オビシノビハゼ



オビシノビハゼ
Ctenogobius aurocingulus
(ハゼ科シノビハゼ属)
奄美大島北部での生息環境: 東シナ海及び太平洋に面したリーフ内側のごく浅いがれ場
主に見られたポイント: 用安ビーチ,アシケブビーチ,
節田ビーチ
水深1〜3mくらい

第1回は,何にしたらいいかな〜?とちょっと迷ったんですが,あまり難しく考えずに,最近見つけた中で一番嬉しかったハゼにしました。それがこのオビシノビハゼです。とにかく奄美大島に来て以来約2年,ずーっと探していたので,今年5月に見つけたときは嬉しさひとしおでした。

以前にIOP DIVNIG NEWS(97年6月号,99年4月号)のオビシノビハゼの記事を読み,このハゼを見つけるポイントは「シノビハゼの多いところに居る」ことと「お腹に並ぶ黄色く短い帯」だな!と勝手に理解したつもりでいました。しかし,実際見つけてみてその思い込みが以下のように変わりました。

まず,
『オビシノビハゼは「シノビハゼの多いところに居る」ではなく「シノビハゼの多いインリーフに居る」』

シノビハゼオビシノビハゼの生息環境をまとめると下表のようになると思います。
湾奥
がれ場
湾内
潮通し良いがれ場
外海
インリーフがれ場
オビシノビハゼ × ×
シノビハゼ
(○:見られる,×:見たことなし)

つまり,シノビハゼは湾奥から外海(インリーフ)までがれ場ならどこにでもいるのに対して,オビシノビハゼはインリーフのがれ場に限られるようです。
5月にオビシノビハゼを見つけたとき「こんなインリーフにいるとは発見だ!」と喜んだんですが,IOP DIVNIG NEWS(97年6月号)を読み返してみたら,「リーフ内側のごく浅いサンゴのがれ場に生息」とはっきり書いてありました。文献はちゃんと読みましょうね(反省)。


そしてもう1つ
『オビシノビハゼは「お腹に並ぶ黄色く短い帯」よりも「背中の鞍状斑」の方が目立って良い目印』

下写真は10cmくらいあったかなり大きめの成魚で,黄色い横帯は明瞭で,遠め(1m先くらい)からでもわかりました。

しかし,下写真のような小さい個体(3〜4cm程度)では,黄色い横帯は,帯というよりは点に近く,海中ではかなり見づらいです。


一方,背中にある鞍状斑は大小個体とも明瞭でかなり遠め(2m先)でもわかります。
この鞍状斑は他のシノビハゼ属のハゼには見られません。
よって,黄色帯よりも鞍状斑で識別した方が良さそうです。
参考までに,現在作成中の「フォトリスト」のコーナーからシノビハゼ属全5種の部分をコピーして以下に示しました。鞍状斑があるのはオビシノビハゼだけであることがわかると思います。

シノビハゼ属 Ctenogobiops
オビシノビハゼ C. aurocingulus
シノビハゼ C. pomastictus
ハタタテシノビハゼ C. tangaraoi
ヒメシノビハゼ C. feroculus
ホホスジシノビハゼ C. crocineus
これまで湾内で(極端な話ではなく)何百匹と出合ったシノビハゼを見るたびに「やっぱりオビシノビハゼじゃないか〜」と落胆していましたが,これからはインリーフで背中の鞍状斑を見て「あ,オビシノビハゼ」と涼しい顔で識別,発見できそうです。