ウミショウブパラダイスの甲殻類 1/28/2007

ここ1ヶ月よく通ったウミショウブパラダイス※で見られた甲殻類を紹介します。

ここで最もよく目についた甲殻類はスジテコシオリエビでした
スジテコシオリエビ
左:カイメンソウに,右:カイメンに

人気種・トガリモエビのなかまもカイメンソウ上で見られました。
トガリモエビ属の1種・横縞なしのズングリタイプ

昨年の今頃,「底の底」の入り口で横縞模様の細長いトガリモエビのなかま(下画像)を見て以来,倉崎でこの手のエビを見るのは2回目です。
トガリモエビ属の1種・横縞ありのほっそりタイプ
昨年1月25日にこことは別の場所で撮影
「海の甲殻類」を見るとウミショウブパラダイスで見つけた横縞のないズングリしたタイプがトガリモエビ Tozeum armatum として載っています。海外の甲殻類図鑑(Debelius氏の表紙が緑色の)を見ると,昨年「底の底」に現われた横縞のあるほっそりしたタイプがトガリモエビ Tozeum armatum として載っています。まとめると下のような感じ・・・
横縞のないズングリタイプ
「海の甲殻類」からはこちらが
トガリモエビ Tozeum armatum か??
横縞のあるほっそりタイプ
「Debelius図鑑」からはこちらが
トガリモエビ Tozeum armatum か??

人気種にも拘わらず,いままでトガリモエビ類について私はほとんど無知だったので,この機会に千葉県立博物館の奥野先生に訊いてみました。
教えていただいたところによると,横縞のないズングリしたタイプ(つまり「海の甲殻類」記載タイプ)は国内産の標本が精査されていてトガリモエビ Tozeum armatum であることが確認されているそうです。一方,横縞のあるほっそりタイプは詳しい検討がされていなく,現時点ではトガリモエビ属の1種とするのが妥当らしいです(トガリモエビ Tozeum armatum の可能性もあるそうです)。

ではウミショウブパラダイスで撮った赤い個体≒「海の甲殻類」記載タイプなのでトガリモエビ Tozeum armatum としてよいか,というと,ちょっと引っかかるのは2つある黒点(下画像の↑↑
「海の甲殻類」のトガリモエビ Tozeum armatum にはこのような2つの黒点がないです。これは色彩変異か?それとも別種?

この点についても教えていただいたところ,このような黒点が2つあるタイプも詳しい検討がされておらず,またトガリモエビ Tozeum armatum にどの程度の色彩変異があるのかも不明らしいです。

よってウミショウブパラダイスの赤く横縞のないズングリした個体もトガリモエビ属の1種とするのが妥当のようです。


話がマニアック,というかややこしくなってきましたが,もう1種(あるいは2種),やはりややこしそうなエビもいました。
アカスジカクレエビ近似種
上のエビは海で見た時はアカスジカクレエビかと思いましたが,写真に撮ってみるとアカスジカクレエビの特徴である第3腹節(上画像の白い縁取りのある赤い点がありませんでした。

参考までに以前に撮ったアカスジカクレエビの画像を下に載せました。

第3腹節のアップ
白い縁取りのある赤い点が特徴
アカスジカクレエビ
以前に倉崎の別の場所で撮影
ウミショウブパラダイスで撮ったアカスジカクレエビ近似種についても奥野先生に伺いました。

その結果,アカスジカクレエビの色彩変異なのか,あるいは別種か? 写真ではなんとも判断がつかないとのこと。

トガリモエビ類といい,アカスジカクレエビ近似種といい,甲殻類もまだまだ未知なことが多くて面白そうだなあ〜と再認識させられ,エビ類も勉強になったウミショウブパラダイスだったのでした。

→後日再度奥野先生にご教示いただきウミショウブパラダイスアカスジカクレエビ近似種はクラゲエビらしくことがわかりました→エビカニトピックス「クラゲエビとアカスジカクレエビ

(※ウミショウブパラダイス=奄美大島ではレアなウミショウブハゼsp.が,ムネボヤ,カイメンソウ,カイメンと3ホスト上で見られ,産卵もしていた倉崎のとある狭いエリアのこと)


これまでのエビカニトピックス


倉崎ビーチの最近の甲殻類
倉崎ビーチのトガリモエビsp.
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