奄美大島で見られるハゼを1種ずつ紹介していこうというコ−ナーです。
奄美大島での生息状況や生態や形態的特徴など観察に役立つ情報をできるだけ書きたいと思っています。
(が,単に思い入れを書くだけになりそう・・・)


今回クローズアップするハゼ(2006年4月2日アップ)

奄美大島ならではのハゼC  

トゲナガハゼ



トゲナガハゼ
Gladiogobius ensifer
奄美大島での生息環境: 湾奥の砂泥地
主に見られたポイント: ガレラビーチ
水深1〜3mくらい


『どの海域にも,固有種とまではいかなくとも,他より数が多かったり,浅いところにいたりして,他より見やすい撮りやすい生物というのが必ずいるのではないでしょうか・・・』という文句ではじめた「奄美大島ならでは」シリーズ,ちょっと竜頭蛇尾気味で久々(1年ぶり汗)のようやく4回目,今回クローズアップするのはトゲナガハゼです。


水中写真は稀?「ザ・トゲナガハゼ」

あの水中写真を集めた大著「日本のハゼ」に未掲載のトゲナガハゼ。それだけでも「奄美大島以外にあんまりいないのかな?」と思ってしまうわけですが,実際にインターネットで「トゲナガハゼ」を検索するとトゲナガハゼとして撮られているのは,今回紹介するザ・トゲナガハゼGladiogobius ensifer ではなく,トゲナガハゼ属の1種Gladiogobius sp..であることが多いようです。

ザ・トゲナガハゼトゲナガハゼ属の1種の違いについては以前に「ニュース」で紹介しましたので,そちらを参照してください(→「ニュース」
ザ・トゲナガハゼ トゲナガハゼ属の1種
「ニュース」より



トゲナガハゼも鰭が命?

一見地味なハゼでも鰭は結構キレイ,という場合がよくあります。このトゲナガハゼも意外にそんなタイプかもしれません。
背鰭や尾鰭にある赤の斑紋や青点が意外にキレイ
オイランハゼ顔負けだな〜」と思えるくらいに鰭の発色をいつかバッチリ撮りたいものです。



トゲナガハゼ=カクレトサカハゼの1つ

トサカを持つユニークなハゼといえば,なんといってもトサカハゼが有名です。
トサカハゼ
実はトサカハゼ以外にもトサカ状の皮質隆起(下画像)を持つ「カクレトサカハゼ」とも言うべきハゼが何種類かいますが,トゲナガハゼもその1つです。



たまにヘンな共生ハゼになります(笑)

トゲナガハゼは,単独でいるのをよく見ます。 実際,図鑑類にはトゲナガハゼ=共生ハゼとは載っていません。しかし,いままで何回かトゲナガハゼがテッポウエビ類と一緒にいるところを見たことがあります。

普通,ハゼとテッポウエビが一緒にいれば,ハゼは見張り役,エビは巣作りの相利共生で,お互いに強い信頼関係が成り立っているように見えます。
一般的なハゼとエビとの共生具合は下画像のような感じではないでしょうか。
@ハゼは尾鰭を巣穴側に向け,
Aエビは巣穴から出るときはハゼに触覚で触れている
なかには,ネジリンボウなどホバリング系の共生ハゼもいますし,摂餌や求愛,けんか時などハゼが巣穴から遠く離れることもありますが,ダイバー接近時など警戒したときは上画像のような状態になっているのをよく見ます。

さて一方,トゲナガハゼはというと,ちょっと様子が違うことが多いです。
@尾鰭を巣穴側に向けず,巣穴の上にまたがっている
Aエビはトゲナガハゼに触覚で触れていない

またこんな窮屈そうな「共生」も見られました↓
一見ぴったりくっついて仲良さそうですが,普通,ハゼがここまで巣穴に入っているときは,エビは警戒してあまり出てこず,こういった状態はあまり見かけないような・・・?(上のようなハゼとエビの会話が聞こえてきそう・・・笑)。

以前にハゼ研究者の方に「ハゼとエビとの共生には,ダテハゼ類のように親密なものと,スジハゼなどのようにそうでないものがある」と教えていただいたことがあります。トゲナガハゼは後者のようですね。


これまでにクローズアップしたハゼ

ホクロハゼ

マスイダテハゼ

ハゼ科の1種(通称クモハゼモドキ)

オビシノビハゼ

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